スマホの画面をスクロールすれば、即物的な言葉があふれている。タイパを追求し、短尺動画で情報を消費する日常。そんな渇ききったデジタル社会だからこそ、逆説的に「行間を読む」ことへの憧れが強まっている。インスタグラムのストーリーに、ただ夜空の写真を上げてこの言葉を添える。それが今のトレンドだ。記号化された感情に飽きた若者たちが、文学的な情緒を求めて深夜のタイムラインを漂っている。
この現象は、単なる懐古趣味ではない。感情を直接ぶつけるリスクを回避したいという、現代特有の自己防衛本能とも結びついている。「好きだ」と言って振られるのは痛いが、「月が綺麗だ」と言ってスルーされるだけなら傷は浅い。言葉の裏に隠されたグラデーションを楽しめる心の余裕が、今、最大のラグジュアリーとして捉えられているのだ。