過去の大規模なマスク供給不足を振り返ると、その主たる理由は「過度な海外依存」と「原材料のサプライチェーン寸断」にありました。当時、日本国内で流通していたマスクの約8割は中国からの輸入に頼っており、現地工場の停止や輸出規制によって国内への流入が完全に途絶えました。さらに、フィルターの核となるメルトブロー不織布をはじめとする原材料不足が世界規模で連鎖し、増産が極めて困難な状況に陥ったのです。
しかし、その後に起きたのは急激な「供給過剰」という逆の混乱でした。政府の生産設備導入補助金を受けた異業種参入や輸入業者の急増によって、市場には粗悪品を含む大量の在庫が氾濫。需給バランスが崩壊したことで価格は急落し、緊急参入した中小メーカーの多くが撤退や減産を余儀なくされるという厳しい淘汰の波が押し寄せました。