なぜトップ俳優として多忙を極める二人が、あえて不便を伴う地方での田舎暮らしを選択したのか。その根底には、松山ケンイチさんが抱いていた「都市生活における消費社会への強い違和感」と「自らの手で生きる力を子供たちに伝えたい」という強い信念があります。
青森県むつ市出身の松山ケンイチさんは、かつてテレビ番組の特番インタビューで「スーパーに並んでいる切り身の肉や魚しか知らない状態のまま、生きている実感が得られるのか疑問だった。命をいただくプロセスを自分自身で体験し、子供たちにも肌で感じてほしかった」と率直な胸の内を語っています。自ら狩猟免許を取得し、畑を耕して作物を収穫する自給自足の生活は、流行のライフスタイルではなく、人間としての根源的な営みを取り戻すための必然的な選択でした。
さらに決定的な要因となったのが、3人の子供たちの学校と教育環境です。夫妻の間には、長男(2012年生まれ・14歳)、長女(2013年生まれ・13歳)、次男(2015年生まれ・11歳)が誕生しています。芸能人の家庭に多い名門私立校やインターナショナルスクールへの一極集中ではなく、夫妻は「地元の公立小中学校」に通わせる選択を取りました。
地方の公立校で地域社会の温かさと厳しい自然の掟に触れながら、泥だらけになって遊び、冬には豪雪の中で雪かきを手伝う。教科書上の知識だけにとどまらない「身体感覚を伴うリアルな学び」を優先した教育方針は、親のネームバリューに頼らず逞しく生き抜く基礎力を育てるという明確な哲学に基づいています。