タイムズスクエアの騒動を契機に、世間の関心は「なぜマライアは事前録音に頼るようになったのか」という根本的な疑問へと向かいました。かつて「生きる伝説」とまで称された歌唱力に、一体どのような変化が起きていたのでしょうか。
マライアが抱えていた声の異変には、いくつかの決定的な要因が存在します。
第一に挙げられるのが、長年患っている「声帯結節」です。マライア自身、過去のインタビューで幼少期から声帯に結節を抱えていることを公表しています。この結節があるからこそ、あの特徴的なハスキーな中音域と超高音のホイッスルボイスが生み出されていたのですが、それは常に「声が出なくなるリスク」と隣り合わせの諸刃の剣でした。
第二に、1990年代から2000年代にかけての過酷なツアースケジュールと喉の酷使です。極限のハイトーンを要求される楽曲を毎晩のように歌い続けた結果、喉の筋肉や粘膜には深刻な疲労が蓄積していました。特に湿度の低い環境や寒冷地、体調不良時には本来の高音が出なくなる頻度が増加し、2010年代半ばにはライブツアーでの不調が目立つようになっていたのです。