猫が床や畳の上で仰向けになり、無防備にお腹をさらけ出す行動は、動物行動学において「環境に対する絶対的な安心感と飼い主への深い信頼」の表れと定義されています。野生動物にとって、内臓が詰まった腹部は外敵から真っ先に守るべき最大の急所です。その部位を無防備に露出できるのは、「ここには自分を脅かす敵がいない」「この相手は自分を攻撃しない」と完全にリラックスしている証拠にほかなりません。
ただし、ここで多くの飼い主が陥りがちな重大な誤解があります。それは「犬のボディランゲージとの混同」です。犬の場合、お腹を見せる仕草は降伏・服従、あるいは「お腹を撫でてください」という直接的なスキンシップの要求であることが大半です。しかし、単独狩猟動物として進化してきた猫にとって、猫がへそ天をする心理は「安全な空間を享受している自己完結したリラックス状態」であり、人間に対する「お腹を触って」というリクエストではないケースが約8割以上を占めます。
さらに、喉をゴロゴロ鳴きながらお腹を出す姿を見せることがあります。これは母猫の母乳を飲んでいた子猫時代の記憶が呼び起こされ、極めて幸福な気分に浸っている「子猫返り」の状態です。また、へそ天でくねくねする意味としては、背中の痒みを解消するグルーミング行動、室温が高い時に体温を逃がす放熱行動、あるいは大好きな飼い主の視線を惹きつけたいという構ってアピールなど、複数の動機が複合的に絡み合っています。