日常的な甘え行動として歓迎されがちな膝乗りですが、突然の行動変容には重大な身体的・精神的リスクが潜んでいる場合があります。ペットケア情報誌『猫スペースきぶん屋』の解説でも触れられている通り、猫が急に膝に乗るようになった局面では、飼い主の鋭い観察眼が求められます。
特に注意すべきは、7歳以上のシニア期に突入した猫の急変です。これまで自立的で抱っこを嫌っていた猫が、突如として飼い主の膝に執着し始める背景には、以下のような病理的要因が隠れているケースが少なくありません。
第一に疑われるのが、内分泌系疾患、とりわけ「甲状腺機能亢進症」です。ホルモンの過剰分泌により代謝が異常に高まるこの病気では、体感温度の狂いや強い不安感から、飼い主への異常な執着・過剰な甘え(行動異常)が生じることがあります。急激な体重減少や多飲多尿、夜鳴きを伴っていないか確認が必要です。
第二に、慢性腎臓病や変形性関節症に伴う体温低下や疼痛です。自力での体温維持が困難になったシニア猫が、暖を求めて人肌にしがみついている場合があります。また、視力や聴力の低下によって空間把握に不安を覚えた猫が、安心感を求めて膝の上に避難している可能性も排除できません。
第三に、環境の激変による分離不安です。引っ越し、家族構成の変化、近隣の工事騒音など、強いストレスに直面した猫が、飼い主を安全の盾として利用している状況です。「可愛いから」と安易に放置せず、食欲、排泄状況、歩行時の違和感など全身状態を精査する姿勢が不可欠です。