「今日はどんな気分ですか? すっきりしたホルスタインにしますか、それとも極上のジャージーでいきますか?」
店頭での注文は、豆の銘柄を選ぶワインバーのそれとは少し違う。客はカウンターに並ぶ複数種類の牛乳瓶を眺めながら、バリスタと対話する。函館、十勝、美瑛。同じ北海道内でも、放牧地や牛の品種によって舌に残る余韻は劇的に異なる。
この「選ぶ楽しさ」が、顧客を単なる消費者から熱心なファンへと変える。コーヒーに詳しくない層でも、牛乳の味の違いなら直感的に理解できるからだ。知識のハードルを下げつつ、奥深いテイスティングの快感を味わせる。この巧みなUX(顧客体験)の設計こそ、リピーターが絶えない本質的な仕掛けといえる。