『BAD』を語る上で絶対に外せないのが、映画界の巨匠マーティン・スコセッシがメガホンをとったプロモーションビデオだ。単なる楽曲の映像化にとどまらず、18分間にも及ぶ濃密なショートフィルムとして制作された。撮影はニューヨークのブルックリンにある実際の地下鉄駅で行われ、ストリートの緊張感が画面越しに伝わってくる。
物語のモチーフとなったのは、私立学校に通う黒人青年エドモンド・ペリーが故郷のストリートに戻った際、旧友たちから「変わってしまった」と詰め寄られ、最終的に悲劇的な結末を迎えたという実話である。スコセッシ監督は、マイケルが抱いていた社会への問題意識を映像美へと昇華させた。黒革のジャケットに身を包んだマイケルが地下鉄でダンサーたちと踊るクライマックスは、今なお語り継がれる伝説の一幕だ。