「馬子にも衣装」という表現を国語辞典で引くと、「どんな人間でも外見を着飾れば、それ相応に立派で見栄えがよくなることのたとえ」と解説されています。一見すると「装いによって魅力が増した」という肯定的な意味合いに思えるかもしれません。
しかし、このことわざの核心は「中身が劣る者であっても」という痛烈な前提にあります。「衣装のおかげで立派に見えているだけで、あなた自身の元々の価値や容姿が優れているわけではない」というニュアンスを根底に孕んでいるため、他人に投げかけると「普段のあなたはみすぼらしい」「外見でごまかしているだけ」と面と向かって侮辱する行為と同義になってしまうのです。
文化庁が過去に実施した国語に関する世論調査や各種コミュニケーション調査でも、若年層を中心に「良い服を着て素敵に変身した相手を褒める言葉」として好意的に誤認しているケースが一定数見られます。しかし、言葉の構造を正しく理解している相手ほど、言われた瞬間に深い不快感を覚えるため、他者に対する賛辞として用いるのは完全に不適切です。