※ここからは作品の結末に関する重要なネタバレを含みます。
睡眠薬の過剰摂取に失敗したロイは、自暴自棄の極致に達し、物語の中で仲間たちを次々と無惨に死なせていきます。復讐の英雄譚は、絶望した青年の「自殺願望の投影」へと変貌を遂げてしまうのです。愛するキャラクターたちが次々に命を落とす展開に耐えかねた少女アレクサンドリアは、涙を流しながら叫びます。「殺さないで! これは私の物語でもあるの!」
この少女の叫びこそが、本作の真の転換点です。ただの聞き手だったアレクサンドリアは物語の共同制作者となり、瀕死の黒山賊(ロイの分身)に立ち上がる力を与えます。現実のロイは少女の純粋な愛と祈りによって魂を救済され、自ら命を絶つことを思いとどまるのです。
エピローグでは、退院したアレクサンドリアが街の映画館でサイレント映画を観るシーンが描かれます。画面に映し出されるのは、ビルから飛び降り、列車から転落する名もなきスタントマンたちの危険なアクション。少女はどのスタントマンを見ても「ロイが演じている」と信じ、誇らしげに微笑みます。
このラストは、映画のために文字通り「落下(Fall)」し続ける無名のスタントマンたちへの熱烈なオマージュであり、「人は誰しも人生という物語の中で転落するが、他者との愛によって再び立ち上がることができる」という力強い人間賛歌の結末として、今なお多くの映画ファンの涙を誘っています。