旅館の客室に用意されている帯は、一般的な夏祭りで見かける固い綿や麻の角帯とは異なり、柔らかくて滑りやすい「平帯(共帯)」が主流です。素材の特性に合わない複雑な結び方を試すと、途中で緩んで何度も締め直す羽目になります。まずは現地で即座に役立つ、簡単でほどけにくい3大結び方をマスターしましょう。
① 旅館浴衣の帯で最も確実な「コマ結び(本結び)」
実用性と強固さを兼ね備えた、旅館で最も推奨される結び方です。「固結び」と混同されがちですが、正しい手順を踏むと横一文字に美しく収まり、ほどく際も端を引くだけでスムーズに外せます。
- 帯を腰に2周巻き、両端の長さを揃える(右側をやや短めにしておくと調整しやすい)。
- 左右の端を交差させ、下から上にくぐらせてひと結びし、しっかり横に引いて締める。
- 上に出た方の端を上にかぶせるように折り曲げ、輪を作る。
- 下に出ているもう一方の端をその輪の中に通し、横方向にしっかりと引き締める。
結び目が縦にならず、帯のラインと水平に「横」に並ぶのが美しいコマ結びの完成形です。
② さりげない洒落感を出す「温泉浴衣の片蝶結び」
蝶結び(リボン結び)の片側だけを輪にする結び方です。通常のリボン結びはお子様っぽく見えがちですが、片蝶結びにすることで左右非対称の小粋なニュアンスが生まれます。
- 帯を腰に2周巻いてひと結びする。
- 下側の垂れを二つ折りにして「輪」を作る。
- 上側の帯をその輪の上から回し、結び目の後ろから引き抜いて片側だけの蝶結びにする。
- 垂れと輪の長さを整え、キュッと引き締める。
③ 本格的な角帯やしっかりした帯向けの「貝の口」
色浴衣プランやワンランク上の温泉宿で、芯の入った角帯が用意されている場合に威力を発揮するのが「貝の口」です。平坦で小ぶりな結び目が背中や腰に密着するため、座椅子にもたれかかっても結び目が潰れず、形が崩れません。
- 「手先(片側の端)」を約30〜40cm取り、半分に折る。
- 手先を胸元で押さえながら、残りの帯を腰に2周巻く。
- 巻いた帯(タレ)を手先と同じ幅に斜めに折り上げ、手先の上から重ねてひと結びする。
- 手先を斜め上へ折り返し、タレで作った輪の中に手先を通し、しっかり締め合わせる。