シリコン型を使ってお菓子を焼いた際、最も多く寄せられる悩みが「焼き上がりに型から外れない」「中心部に火が通らず生焼けになる」という二大トラブルです。型離れの良さを謳う製品が多いにもかかわらず、なぜこのような現象が起きてしまうのでしょうか。その決定的な理由は、シリコンという素材特有の熱伝導率の低さと微細な表面構造にあります。
シリコンは金属(アルミやブリキ)に比べて熱が伝わるスピードが非常に緩やかです。そのため、金属型と同じ温度・時間で焼くと、外側は固まって見えても中心部の温度が十分に上がらず、結果としてシリコン型の生焼けを引き起こします。特にパウンドケーキのような厚みのある生地では、内部まで熱が届く前にタイマーが鳴ってしまうケースが頻発します。
また、「油を塗らなくてもスルッと抜ける」と思われがちですが、糖分や水分の多い生地はシリコンの目に見えない微細な凹凸に入り込み、焼き固まることで強固にくっついてしまいます。これを防ぐ確実な裏ワザが、正しい油の塗り方です。型を使う前に、常温に戻した無塩バターまたは製菓用オイルスプレーを刷毛で薄く均一に塗り、薄力粉を軽く叩いて余分な粉を落としておく(ポマード状油脂+強力粉のコーティング)だけで、焼き上がりの型離れが劇的に向上します。