ネット上や一般の視聴者の間では「テレビでとぼけた回答をするおじいさん」というパブリックイメージが定着していますが、寄席に通う落語通や演芸評論家の間での評価はまったく異なります。
木久扇の高座の魅力は、抜群のリズム感と客席を一瞬で明るくする圧倒的な陽のエネルギーにあります。師匠である八代目林家正蔵(林家彦六)の思い出を語る『彦六伝』や、昭和の映画スター・チャンバラを題材にした独自の新作落語は、他の追随を許さない名人芸です。
新宿末廣亭や浅草演芸ホールなどの寄席関係者からも、「木久扇師匠が高座に上がると、場の空気がパッと華やぎ、前の出番までの重い空気が一瞬で吹き飛ぶ」と絶賛されています。テレビで見せていたおとぼけキャラは、共演者を引き立て番組全体のバランスを取るための高度に計算された「道化の美学」であったことが、高座での本格的な話芸を見れば一目瞭然です。