本州に生息するツキノワグマ、そして北海道の生態系の頂点に君臨するヒグマ。いま、両者の行動パターンには決定的な変化が生じている。かつて人間を恐れて夜間にひそかに活動していた個体が、白昼堂々と市街地を闊歩する「アーバン・ベア(都市型クマ)」へと変貌を遂げているのだ。
野生動物医学の第一人者である北海道大学大学院の坪田敏男教授は、この現象について警鐘を鳴らす。ブナやミズナラといった堅果類の凶作に加え、人間側の過疎化によって緩衝地帯だった里山が藪化し、クマにとって市街地までの侵入ルートが整備されてしまったことが主因だ。生ゴミや放置された果樹の味を覚えたクマは、人間を「恐れるべき捕食者」ではなく「容易に高カロリーの餌を得られる隣人」として認識し始めている。