この由緒ある社を語る上で欠かせないのが、祀られている神々の異例な組み合わせである。強大な武勇と厄払いの力を象徴する素戔嗚尊と、海の神の娘であり優美さと生命力を司る豊玉姫命が共に鎮座している。相反する気質を持つ二柱の神が同社に祀られた経緯には、古代における陸の民と海の民の融合や、荒ぶる自然現象を鎮めようとした太古の祈りが背景にあるという。
地元住民の間では、古くから深夜の境内にまつわる不思議な噂が語り継がれてきた。満月の夜になると拝殿の陰からほのかな光が立ち上り、波の音とも風の音ともつかぬ妙なる響きが聞こえるという。科学的な説明はつかないものの、こうした口伝の存在が古社のミステリアスな魅力をいっそう引き立て、歴史愛好家たちの探求心を刺激してやまない。