「離乳食の卵は毎日あげないと意味がないのか、それとも危険なのか」という疑問に対し、小児アレルギーの臨床現場が導き出している答えは極めて明確です。結論から言えば、「すでにアレルギーがないと確認できた量を、習慣的に摂取し続けることは有効であるが、毎日無理に食べさせる必要はない」というのが最新の医学的知見に基づいた事実です。
かつて日本の育児現場では「アレルギーを起こしやすい食品は1歳を過ぎるまで遅らせる」という指導が一般的でした。しかし、国立成育医療研究センターが発表した画期的な臨床研究(PETIT研究)をはじめとする世界各国のデータにより、生後早期から微量の加熱卵を摂取した乳児は、卵を完全除去した乳児に比べて鶏卵アレルギーの発症率が約8割抑制されたことが立証されました。この知見は厚生労働省が改訂した「授乳・離乳の支援ガイド」にも反映され、生後5〜6か月の離乳初期からの卵黄摂取が正式に推奨される転換点となったのです。
ここで保護者が誤解しやすいのが「免疫寛容(特定の物質を体が害のないものと認識する仕組み)」と「連日摂取のプレッシャー」の混同です。体内に微量のアレルゲンを定期的に入れることでアレルギー反応を抑えるスイッチが入ることは確かですが、これは「365日欠かさず卵を食べさせ続けなければならない」という意味ではありません。むしろ、消化機能が極めて未熟な乳児に対し、義務感から毎日卵を強要することは、内臓への負担や消化管アレルギーを引き起こす要因になりかねません。臨床医の間では、「週に2〜3回、無理のない間隔で食卓に取り入れること」で十分に免疫寛容を維持できるという見解が共通認識となっています。