モーグル日本代表の黄金期を語る上で欠かせないのが、3歳年下の後輩・上村愛子との関係性です。2000年代初頭のメディアは、豪快な滑りと孤高の勝負強さを持つ里谷多英と、愛らしいルックスと緻密なターン技術を武器にする上村愛子を、しばしば「好対照なライバル」として対比構造で報道しました。
メディア主導の「クールな女王 vs アイドル的ヒロイン」という構図は世間の関心を大いに煽りましたが、実際の二人の関係は過激な対立などではなく、互いの技術と個性を深く認め合う戦友でした。里谷自身、後のインタビューや手記において、若くして注目を一身に集めた上村の重圧を誰よりも理解し、陰ながら見守っていたことを明かしています。
世界転戦の過酷な遠征生活において、常にメダル獲得の期待を背負い続けた二人。メディアが作り上げた対立のドラマを越えて、日本モーグル界を世界トップレベルへと押し上げた同志としての絆は、現役を退いた現在もリスペクトの念として脈々と続いています。