伝統的な日本料理の観点から見ると、冷しゃぶは「肉の温度」と「タレの酸味」の相互作用が美味しさを左右する繊細な豚肉料理である。冷やしすぎたお肉は脂が固まり、口当たりが悪くなるためだ。
お肉をグラグラと沸騰したお湯ではなく、80度前後の微沸騰状態で優しく茹であげ、氷水ではなく常温に近い薄い塩水にくぐらせる。この工夫によって肉質が硬くなるのを防ぎ、柔らかな食感をキープできる。
しっとり仕上がった豚肉には、少し濃いめに調合したタレが良く合う。肉表面の微小な水分とタレが合わさることで、口の中でちょうど良い塩分濃度になり、噛むほどに肉汁とタレの旨味が溢れ出す仕掛けだ。