六欲天を理解する上で極めて興味深いのが、第5天「楽変化天」と第6天「他化自在天」の対比です。どちらも欲界の最上層に位置しながら、その快楽の享受方法には決定的な思想の違いが存在します。
楽変化天が「クリエイター型」として自給自足の歓びを極めるのに対し、最上位の他化自在天は「他人が創造した快楽を自在に奪い取って自分のものにする」という性質を持ちます。自ら苦労して創り出す手間すら省き、他者の歓楽を意のままに支配・享受することに最高の優越感を抱くのです。
他化自在天には、仏道修行を妨害する「第六天魔王(波旬)」が住むとされています。仏教は、欲望が純化・巨大化する果てに「他者の支配」へと行き着く人間の心理的トラップを冷徹に見抜いており、自作自受にとどまる楽変化天と他者支配に走る他化自在天の間に明確な境界線を引いています。