この悲劇の剣客に圧倒的な肉体性と情念を与え、日本映画史に不滅の金字塔を打ち立てたのが、1969年公開の大映作品『人斬り (映画)』である。主演の勝新太郎が演じた以蔵は、野獣のような荒々しさと子どものような無垢さを併せ持ち、観る者を圧倒した。
メガホンを取った五社英雄監督の凄まじい熱量のもと、武市半平太を仲代達矢が冷徹に演じ、さらには作家・三島由紀夫が薩摩の刺客・田中新兵衛役で鮮烈な存在感を放った。当時の日本映画産業が誇る最高の才能が集結したこの作品は、単なる時代劇の枠組みを破壊し、人間の業と孤独を描ききった傑作として現在も高く評価されている。