ネット上の掲示板やSNSでは、「嵐のドラマが地上波でほとんど再放送されないのは、事務所の体制変更や活動休止のせいではないか」といった憶測が飛び交っています。しかし、テレビ東京やTBSなどキー局で編成業務に携わってきた複数の業界関係者の証言を突き合わせると、真相は嵐ドラマ再放送できない理由の背後にある、極めて実務的かつ複雑な「権利関係の三重苦」に帰着します。
第1の要因は、劇中使用楽曲の権利処理です。嵐のドラマは、オープニングやエンディングだけでなく、劇中の随所に嵐ドラマ主題歌ヒット曲や国内外の著名なアーティスト音源がふんだんに組み込まれています。『花より男子』の『Love so sweet』や『魔王』の『truth』、『フリーター、家を買う。』の『果てない空』などは、放送当時の契約において「地上波1回限りの包括許諾」で処理されていたケースが散見されます。現在、地上波で再放送する場合、改めて原盤権元や著作権管理団体(JASRAC等)との再契約と追加のロイヤリティ支払いが必要となり、広告収入が減少した現代の地上波再放送枠では採算が合わないという経済的ハードルが存在します。
第2の要因は、共演者の移籍・独立・引退に伴う許諾の困難さです。2000年代〜2010年代のドラマには、現在すでに芸能界を引退している元俳優や、所属事務所を離脱して海外や他分野で活動しているキャストが数多く名を連ねています。肖像権の再許諾は主要キャスト全員から書面で取得しなければならず、一人でも許諾が下りない、あるいは連絡がつかない場合は放送全体が見送られるという鉄則があります。
第3の要因は、放送枠自体の構造変化です。昭和から平成にかけて定着していた「平日の夕方ドラマ再放送枠」は、各局が報道情報番組の拡大(15時台〜18時台の帯番組化)へと舵を切ったことで激減しました。再放送の場そのものが物理的に消滅した結果、視聴者の体感として「嵐のドラマが封印された」という錯覚が生じることになりました。