クリスマスローズ全般に付けられた花言葉には、相反するふたつの感情が同居しています。代表的なものは「慰め」「私の不安をやわらげて」「追憶」「私を忘れないで」である一方、一部で「中傷」や「発狂」といった恐ろしい意味が語り継がれてきました。なぜこれほど極端な二面性を持つに至ったのでしょうか。
ポジティブな意味である「慰め」や「私の不安をやわらげて」は、キリスト教の有名な伝説に由来します。イエス・キリストが誕生した際、ベツレヘムの貧しい羊飼いの少女マデロンが、幼子イエスに捧げる贈り物が何もなく涙を流していました。その涙が降り積もる雪に落ちた瞬間、天使の手によって純白の花が咲き乱れ、少女はその花をキリストに捧げることができたと伝えられています。この時に咲いた花が、原種のひとつ「ヘレボルス・ニゲル(Helleborus niger)」であり、絶望の淵にあった少女を救ったエピソードから「慰め」の花言葉が定着しました。
一方で「中傷」などのダークな花言葉は、ヘレボルス属が持つ強い毒性と、ヨーロッパにおける薬草・毒草としての歴史に深く根ざしています。学名の「Helleborus」はギリシャ語の「helein(殺す)」と「bora(食べ物)」に由来するとされ、植物全体にサポニンや強心配糖体(ヘレボリン、ヘレブリンなど)を含んでいます。古代ギリシャの医師ヒポクラテスは精神病の鎮静薬や下剤として処方していましたが、用量を誤れば嘔吐、痙攣、呼吸困難を引き起こし、死に至る劇薬でした。この「狂気を取り除く薬であると同時に狂気を引き起こす毒」という危うい性質が、やがて「中傷」や「企み」といった影のある花言葉を生み出す土壌となったのです。