『クレクレタコラ』が今なお「狂気の特撮」と称される最大の要因は、道徳的教訓を完全に排除した剥き出しのエゴイズムにあります。「これ欲しいクレ〜!」という叫びとともに、他人の持ち物を強奪しようとするタコラの行動様式は、従来の児童向けヒーロー番組が守ってきた勧善懲悪のコードを根本から破壊しました。
制作を手掛けたのは、怪獣映画の総本山として知られる東宝特撮の精鋭部隊でした。なかでもメイン監督を務めた坪島孝氏は、植木等主演の『クレージー作戦』シリーズなどで日本映画界を席巻した喜劇の巨匠です。坪島監督は生前のインタビューにおいて「言葉や理屈ではなく、純粋な動きとテンポで笑わせるサイレント映画の手法を特撮着ぐるみ劇に移植した」と述懐しています。
脚本の段階から徹底されたのは、スピード感と暴力描写のデフォルメです。ダイナマイトによる爆破、タコ焼きにされそうになる拷問、裏切りと報復の連鎖が、軽快なクレクレタコラ主題歌(作曲:小林亜星、歌:石川進)に乗せて矢継ぎ早に繰り出されます。この洗練されたナンセンスギャグの構造こそが、単なる悪ふざけを超えた前衛芸術としての評価を決定づけました。