退院は治療のゴールではなく、長い回復への旅の始まりにすぎない。顔面神経麻痺による表情の非対称性、咬合不全、開口障害、瘢痕拘縮といった身体的後遺症を防ぐため、多職種チームによるリハビリテーションが数カ月から数年単位で継続される。言語聴覚士や理学療法士との連携による緻密な機能訓練が不可欠だ。
さらに見過ごせないのが、凄惨な襲撃体験がもたらす心的外傷後ストレス障害(PTSD)への対応である。鏡を見る恐怖や突発的なフラッシュバック、睡眠障害に苦しむ受傷者は少なくない。身体の再建と並行して精神科医や臨床心理士が早期から介入し、心のケアを継続することが、患者が再び前を向いて生活を送るための不可欠な支柱となっている。