狂気のインパクトから一転、フジテレビ系木曜劇場『あなたがしてくれなくても』で彼女が提示したのは、息が詰まるほどのリアリズムだった。演じたのは、仕事を愛し、キャリアと夫婦関係の間で静かにすれ違っていくファッション誌の副編集長・楓。派手な叫び声を封印し、伏せた睫毛の震えや微かな呼吸で演じ分けた繊細な心理描写は、多くの同世代女性の共感を呼んだ。
満たされない孤独を抱えながらも、弱音を吐けずに強がる妻の孤独。愛憎劇という激しいジャンルの底辺にある「冷え切った日常の痛み」を体現したこの芝居によって、彼女の評価は名実ともに確固たるものとなった。怪演という飛び道具に頼らずとも、心理の機微を緻密に紡ぎ出せる実力派であることを証明したのだ。