「自分は毎日コーラを飲んでいるが、歯なんて溶けていない」と豪語する人がいる一方で、歯科医院の診療チェアでは深刻な酸蝕被害を告白する患者が後を絶ちません。ネットコミュニティやSNSに投稿されるリアルな声と、臨床現場の証言を突き合わせると、ある共通の行動パターンが見えてきます。
オンラインのQ&Aサイトやソーシャルメディアを調査すると、切実な体験談が数多く確認できます。「在宅ワーク中、集中力を維持するために500mlのコーラを机に置き、1日中数分おきに口に含んでいたら、半年ほどで前歯の先がギザギザに欠けてきた」「冷たい水を飲んだだけで激痛が走り、歯科を受診したら『酸蝕症で歯の厚みが半分になっている』と診断され絶句した」といった生々しい報告です。
都内の歯科クリニックに勤務する歯科医師は、診療現場の様子を次のように語ります。
「患者さんの中には、虫歯菌がほとんどいないにもかかわらず、前歯の裏側や奥歯の咬合面がすり鉢状に溶けている方がいらっしゃいます。問診で生活習慣を深掘りすると、ほぼ100%の確率で『デスクワークをしながら炭酸飲料やエナジードリンクをデスクに常備している』『就寝直前に炭酸を飲むのが日課になっている』という事実に行き当たります。問題は飲む量そのものよりも、『酸に晒されている時間の長さ』なのです」
食事の際にコップ1杯のコーラを一気に飲み干し、その後に水やお茶を飲む人と、ペットボトルのキャップを開け閉めしながら数時間かけてチビチビと飲み続ける人では、歯への攻撃力に天と地ほどの差が生じます。後者の場合、口腔内が常にpH5.5以下の酸性状態に固定され、唾液が持つ再石灰化のチャンスが完全に奪われてしまうのです。