これまでの防衛戦や近界遠征を見据えた選抜シミュレーションにおいて、遊真が見せる戦闘勘の鋭さは際立っている。かつて三輪秀次が放った鉛弾(レッドバレット)を瞬時に学習し、相手の重量を爆発的に増加させる『錨(アンカー)』の印として自身のレパートリーへ昇華させた戦術は、その柔軟性を象徴する白眉のシーンだ。
だが、華々しい戦果の裏には冷酷なタイムリミットが横たわる。トリオン体で擬似的に活動し続ける代償として、指輪内部にある遊真本来の肉体は緩やかに、しかし確実に死へと近づいている。トリオンの消費量や日々の生命維持コストは決して無視できず、戦局が進むごとに「残された時間の少なさ」が戦術の組み立てにも影を落とし始めている。一手一手に命を削るリアリズムこそが、読者の胸を締めつける。