今日の研究基盤を作り上げた歴史的背景にも目を向ける必要がある。20世紀半ば、ウィリアム・マスターズとともにパイオニアとして臨床研究を推し進めたヴァージニア・ジョンソンの功績は、現代の学術界においても極めて大きい。
彼女らは実験室での生理データの計測を通じて、男女の性的反応サイクルを初めて科学的言語で体系化した。当時、女性の性的反応は男性の従属物とする偏見が根強かったが、ジョンソンらの実証研究は女性が固有かつ高度な身体反応能力を持つことを実証した。この発見が現代の性科学の基礎を築いたと言っても過言ではない。
先人たちが切り開いた実証的アプローチは、偏見や恥の意識を科学的理解へと置き換える基盤となった。神話や精神論を排除し、身体で起きている事象を観察する客観的な視点こそが、現代における包括的なセクシャルウェルネスの起点となっている。