ターミナル駅である梅田駅からほど近い路地裏。店内に入れる人数が限られていることもあり、敷地外には常に長い列が伸びていた。雨の日も、猛暑の夏も、寒風が吹き荒れる冬も、焼き上がりの時間を狙って全国からファンが集結した。その光景は、どこか祝祭めいた熱気を帯びていた。
スライドドアが開くたびに漂う、バターとハーブと焼き立ての小麦が混ざり合った至高の香り。ショーケースに美しく並べられたパンたちは、まるで高級ジュエリーブティックの宝石のように輝いていた。並んででも買いたい。その強いモチベーションを大勢の人々に抱かせ続けた場所は、後にも先にもそう多くはない。