当時の状況を振り返ると、この騒動は単なる個人の失態では済まされない構造的な問題を孕んでいた。2000年代半ば、ブロードバンド網の普及に伴い、個人が大量のデータをやり取りする環境が急速に整った。しかし、それに伴うリスク意識はあまりに希薄だったと言わざるを得ない。被害男性が自宅の端末で作業を行った結果、社内機密情報とプライベートファイルが混同され、ネットの闇へと一気に放出されたのだ。
流出したデータには、顧客情報や社内文書、さらにはあまりにも個人的な写真や動画が含まれていた。これが日本のネット史において最悪級の情報漏洩事件と評される理由は、流出規模の大きさもさることながら、被害者の尊厳がネット上で無慈悲に娯楽化された点にある。一度ネットに漂い出したデータは二度と回収できない。その残酷な真実を、日本人が初めて突きつけられた歴史的事件だった。