映画音楽の制作において、通常は完成した映像に合わせて音楽を発注・作曲する「フィルムスコアリング」が一般的です。しかし、『君の名は。』における新海誠監督とRADWIMPS・野田洋次郎氏のコラボレーションは、その常識を根底から覆すものでした。
制作初期の2014年、新海監督からプロットを受け取った野田氏は、まだ映像が影も形もない段階から楽曲のデモ制作を開始。野田氏から送られてきた『前前前世』や『スパークル』の初期デモを聴いた新海監督は強い衝撃を受け、「音楽のリズムや盛り上がりに合わせて絵コンテのカット割りやシーンの秒数を修正する」という前代未聞の逆算的な演出を決断しました。
1年半以上におよぶキャッチボールの中では、新海監督が「このシーンの感情をあと数小節引き延ばしてほしい」とリクエストし、野田氏が劇伴の秒単位の調整に応じるなど、映像作家とミュージシャンがお互いのクリエイティビティを極限までぶつけ合いました。この妥協なき共同作業こそが、映像と音楽が完全に融合した奇跡のグルーヴ感を生み出したのです。