「竹に雀」の意匠は、上杉家専属のものではない。仙台の伊達家をはじめ、勧修寺流の流れをくむ複数の大名家が類似の紋章を用いている。しかし、紋章学の視点で細部を精査すると、そこには明確な差異と主張が見て取れる。
伊達家の雀がふっくらとした輪郭で竹の葉に囲まれているのに対し、上杉家の「竹に飛び雀」は、竹の節の配置や雀の羽の開き方に鋭利なダイナミズムが宿る。雀の嘴や尾羽の角度一つにも、武門としての鋭さが封じ込められているのだ。この紋章は、謙信の養子である景勝を経て、近世の米沢藩へと厳格に受け継がれた。財政難に苦しんだ江戸時代の米沢藩においても、この紋章は藩士たちの誇りの支柱であり続けた。荒波を越えて現代に伝わる家紋の美しさは、過酷な時代を生き抜いた武士たちの矜持そのものである。