油の温度、衣の厚み、そして揚げる秒数。すべてが秒単位で計算されている。名物の揚げたて天ぷらは、箸を入れた瞬間にサクッと小気味よい音を立て、素材本来の水分と旨味を衣の中にぎゅっと閉じ込めている。衣は驚くほど軽く、何品食べても胃に重さを残さない。
そこに合わさるのが、香り高い十割蕎麦だ。つなぎを一切使わずに打たれた蕎麦は、ともすれば切れやすく繊細だが、見事なコシとしなやかな喉越しを保っている。噛みしめるたびに広がる野趣あふれる穀物の甘み。熱々の天ぷらと冷たい蕎麦の温度差が生み出すコントラストは、一度体験すると記憶から消えない。