これほど優れた特性を持ちながら、他社が相次いで撤退した背景には、過酷なコストと技術的ハードルがある。左右にシリンダーが広がるため幅を取り、エンジンルームの設計に大きな制約が生じる。左右に2つのシリンダーヘッドを持つ構造上、部品点数が増えて製造コストが跳ね上がる点も無視できない。オイルの循環や排ガス浄化の難しさも、現代の厳格な環境規制においては大きな課題だ。
それでも、象徴的モデルであるポルシェ911のアイデンティティとしてポルシェはこの形式を守り抜いてきた。一方のSUBARUも、ハイパフォーマンスモデルのスバル・WRXをはじめとする主力車種にボクサーを据え、独自の四輪駆動システム(シンメトリカルAWD)の核として熟成を重ねている。両社にとって、このパワーユニットは単なる機械パーツではなく、ブランドの矜持そのものなのだ。