舞台上で躍動するライオンたちのマスクには、外見の美しさだけでなく、俳優の動きに連動する緻密な工学的ギミックが組み込まれています。特に主人公シンバと悪役スカーのマスク構造には、それぞれのキャラクター性を際立たせる対照的な工夫が施されています。
シンバのマスクは、普段は頭上に誇り高く鎮座する王冠のような形状をしています。しかし、シンバが身を低くして獲物を狙うポーズや敵と対峙するファイティングポーズをとると、重力と身体の傾斜に連動してマスクが自然に顔の前方へ滑り降りる設計になっています。これにより、若きライオンが野生の本能を剥き出しにする瞬間が視覚的に強調されます。
対するスカーのマスクは、より複雑なメカニズムを誇ります。スカーの衣装の胸元や手元には特殊なワイヤー操作レバーが仕込まれており、俳優が手元を操作することで、頭上のマスクが獲物に噛み付くように前方にせり出す仕組みになっています。また、スカーのマスクは非対称で歪んだ骨格デザインとなっており、冷酷さとコンプレックスを抱えた内面を強烈に物語っています。
これらのマスクは、かつて木彫りで作られていた伝統的仮面をベースにしながらも、現代の航空宇宙産業でも使われる超軽量カーボンファイバー(炭素繊維)やシリコン樹脂、チタンワイヤーを用いて制作されています。重量を極限まで削ぎ落とすことで、アクロバティックなダンスや激しい立ち回りを可能にしています。