インターネット上の料理コミュニティや動画のコメント欄では、「飾り切りはおしゃれだけど、平日の忙しい夕飯にやる暇はない」「専用の彫刻刀や高級包丁がないと無理」という誤解が広く流布しています。しかし、これはプロの技巧と家庭用の簡便テクニックを混同したことによる完全な先入観です。
第一の誤解である「特殊な道具が必要」という点について、前述の通り必要なのは一般的な三徳包丁と使い捨ての割り箸、あるいは百円均一でも手に入る標準的なピーラーのみです。高価なペティナイフを使わずとも、包丁の「刃元」と「先端」の使い分けを理解していれば、誰でも十分な精度でカットできます。
第二の誤解である「時間がかかる」という点も、実際の作業工数を計測すると事実とは異なります。通常の輪切りを包丁でトントンと50回刻む時間(約40秒)と、ピーラーで10本のリボンを削り出す時間(約45秒)には、わずか5秒程度の差しかありません。むしろ、飾り切りによって味の染み込み時間が15分以上短縮されるため、トータルの調理時間で見れば、飾り切りを取り入れた方が圧倒的に「時短」につながるという逆転現象が起きています。
さらに、「飾り切りをすると水溶性ビタミンが逃げて栄養がなくなる」という言説も一部で見られますが、浸水時間を3分以内に留め、塩もみ後の水洗いを避けてペーパーで拭き取る方式を採用すれば、ビタミンCやカリウムの流出はごくわずかに抑えられます。むしろ、見栄えの良さによって生野菜の摂取量が自然と増える心理的メリットの方が遥かに大きいと言えます。