近年、インターネットや育児本で広く推奨されているのが「子どもの気持ちに共感しましょう」というアドバイスです。「嫌だったんだね」「悔しかったね」と共感を示すことは原則として正しいアプローチですが、現場ではこの言説が画一的に解釈され、かえって混乱を招くケースが目立ちます。
最大の盲点は、「共感すること」と「要求を呑むこと」を混同してしまう点にあります。例えば、「お菓子をもっと食べたい」と床に寝そべって泣く子どもに対し、「お菓子食べたかったよね」と共感した直後、泣き止まないことに根負けして「じゃあ1個だけだよ」とお菓子を与えてしまう対応です。これは行動心理学でいう「間欠強化」にあたり、「激しく泣き叫べば最終的に要求が通る」という強烈な成功体験を脳に刷り込むことになります。
ネットの体験談などで「共感しても全く泣き止まない」「むしろ癇癪が長引いた」という不満が噴出するのは、大人が「共感によって子どもを即座にコントロールしよう」としているからです。共感とは子どもの感情の波を消し去る魔法の杖ではありません。「気持ちは受け止めるが、ダメなルールは曲げない」という一貫した姿勢がなければ、子どもは何が許され何が拒絶されるのかの境界線を見失い、余計に不安と混乱を深めてしまいます。