荒木飛呂彦氏が第5部の執筆に際して行ったイタリア現地取材は、作品の空気感に決定的な説得力を与えています。物語はナポリ(ネアポリス)の空港から始まり、カプリ島、ポンペイ遺跡、ヴェネツィア、サルディニア島、そして決戦の地であるローマのコロッセオへと、イタリア半島を縦断する壮大なロードムービーの構造を持っています。
荒木氏自身が手記やインタビューで明かしている通り、イタリアの強烈な陽光と濃い影のコントラスト、古代ローマ時代から続く彫刻の肉体美、そしてルネサンス美術の構図が、キャラクターたちのポージングやファッションに色濃く投影されています。
現地ナポリの裏路地に漂う混沌とした熱気、観光地としての華やかさの裏にあるマフィアの支配構造など、現地取材で得られた皮膚感覚がストーリーの骨格を成しています。イタリア語のフレーズが単なる飾りにとどまらず読者の胸に刺さるのは、綿密なロケーションリサーチによって構築された舞台のリアリズムがあるからにほかなりません。