119番通報を受けてから現場に駆けつける救急救命士は、移動する車内で高度な処置を行いながら、受け入れ先となる救急外来(ER)との無線連絡に追われている。
現場到着までの所要時間は年々延伸傾向にあり、限られた救急医療資源をいかに真の重症者へ配分するかが社会全体の課題となっている。軽微な擦り傷や「翌朝の診察待ちを避けたい」という理由での安易な要請が、心肺停止患者への現場到着を数分遅らせる現実は否定できない。
しかし、現場の救命士が一様に口を揃えるのは「迷って重症化するくらいなら呼んでほしい」という言葉だ。適正利用とは、呼ぶべき人を排除することではなく、適切な判断基準を社会全体で共有することに他ならない。