1999年、文藝春秋から出版された手記『「少年A」この子を生んで』は、加害者の母親が自らの言葉で事件に至るまでの家庭環境や子育ての実態を明かした記録として、発売当時大きな社会的衝撃を与えました。
手記の中で母親は、自らの教育方針が「厳格なしつけ」と「過度な干渉」に偏っていたことを告白しています。長男である少年Aに対して幼少期から高い期待を寄せ、箸の持ち方や言葉遣い、学習習慣に至るまで厳しく叱責を繰り返していました。一方で、少年Aが精神的な拠り所としていた母方の祖母が他界した際、その心のケアを十分に行えなかったことや、小動物の虐待といった異常行動の予兆に気づきながらも「単なる悪戯」として見過ごしてしまったことに対する痛恨の悔恨が綴られています。
この手記に対しては「母親としての甘さや自己保身が見え隠れする」という厳しい批判が相次いだ一方、児童虐待や家庭教育の難しさを浮き彫りにした貴重な心理資料としても受け止められました。なお、手記の出版によって得られた印税数千万円は、弁護団を通じて全額が被害者遺族への損害賠償金として支払われています。