レバーを敬遠する人の多くが挙げる「金属っぽい血生臭さ」。この不快な風味の正体は、組織内に残留した血液中のヘモグロビンが空気や熱によって酸化したものです。世間一般では「牛乳に漬ける」という手法が有名ですが、表面をコーティングして匂いをマスキングしているに過ぎず、深部に固まった血豆(血栓)が残っていれば加熱した瞬間に嫌な悪臭が立ち上ります。
フレンチの現場で重用される、鶏レバーコンフィの下処理と臭み取りの黄金手順はシンプルかつ合理的です。
- 解剖学的な切り分け:レバー(肝臓)を2つの房に切り分け、連結しているハツ(心臓)を切り離す。ハツは縱半分に開き、内部に溜まった黒い血塊を指先と流水で完全に押し出す。
- 血管・結合組織の徹底除去:レバーの房の間を走る白いスジや血管の根元を包丁で削ぎ落とす。断面から見える小さな赤黒い血餅(けっぺい)も、指先で優しくかき出す。
- 一口大へのカットと水洗い:均一に熱を通すため、レバーの厚みを揃えて斜めに大きめの一口大(約20〜25g)に切り分け、薄い流水で揉み洗いして表面のぬめりを落とす。
- 10%の冷塩水(ブライン液)浸水法:レバー重量がかぶる程度の水に対し、10%の食塩を加えた氷水に約15分漬ける。浸透圧の作用でレバー内部の余分な濁った血が外側へ排出され、同時に身が適度に引き締まる。
- 水気の完全拭き取り:ザルに上げた後、厚手のペーパータオルで1つずつ抱き込むようにして水気を完全にぬぐい去る。水分が残っているとオイルが濁り、劣化の原因になる。
牛乳に頼らずとも、この物理的な血抜きと脱水を完遂するだけで、驚くほど澄んだ旨味だけが際立つ極上のベースが整います。