ねずみ男のプロフィールを水木プロダクションの公式資料で辿ると、奇怪極まりない設定が浮かび上がる。およそ300年前に生まれ、一度も風呂に入ったことがなく、全身から悪臭を放つ怪人。しかし、彼の本質を決定づけているのは、その不潔さではなく「人間と妖怪の間に生まれた半妖怪」という血の宿命だ。
妖怪の世界において、彼は純血の力を持たない劣等種として見下される。一方で人間の社会に紛れ込もうとすれば、その異形の風貌と異臭ゆえに激しい迫害を受ける。どちらの共同体にも帰属できない根無し草の孤独。水木しげるが描いた初期設定には、敗戦後の混乱期に社会の吹き溜まりへ追いやられた人々の姿が色濃く重なる。彼が怪奇の存在でありながらどこか哀愁を漂わせるのは、生まれ落ちた瞬間から世界に拒絶され続けてきた出自そのものにある。