高度経済成長の残り香を追いかけ、「経済さえ成長すればすべてが解決する」と信じ込む発想は限界を迎えている。著作『経済の時代の終焉』で喝破された現実は、低成長が常態化した構造を直視することから始まる。パイそのものが劇的に広がらない以上、富の滴り落ちを待つトリクルダウンは機能しない。
賃金が伸び悩むなかで膨らむ将来不安は、防衛的な貯蓄へと人々を追い込み、内需を窒息させている。病気や介護、教育費の重圧という根源的な不安を公的に取り除かない限り、どれほど刺激策を重ねても消費は動かない。経済成長を目的とするのではなく、生活の安心を起点に据えるコペルニクス的転換が求められている。