記者クラブに加盟していれば自動的に特ダネが手に入るわけではありません。警察担当になった若手記者が最初に配属されるのが、いわゆる「サツ回り取材」です。殺人や強盗などの凶悪犯罪を扱う警視庁捜査一課や、組織犯罪・汚職事件を追う部署の担当となった記者は、過酷な取材ルーティンへと身を投じます。
その中心となるのが「夜討ち朝駆け」です。朝の4時や5時に捜査幹部やベテラン刑事の自宅前で待ち構え(朝駆け)、出勤時のわずかな時間に言葉を交わします。夜は帰宅を待ち伏せ、深夜まで自宅前で立ち尽くす(夜討ち)日々が続きます。玄関先で門前払いを食らいながらも、何度も顔を出し、タバコや世間話を通じて少しずつ信頼関係を築いていきます。
刑事たちが語る情報の多くは「公式には話していない」という前提のオフレコ取材です。「あいつの供述は取れているのか」「凶器の発見場所はどこか」といった核心部分は、居酒屋の片隅や車中、あるいは自宅の玄関口で、ボイスレコーダーを回さずメモも取らない極秘のやり取りの中で引き出されます。この人間関係の構築こそが、警察取材の現場における唯一無二の武器とされてきました。