警察組織の内部において、「二課はインテリ集団」「警察官の中のエリート」としばしば評されます。では、その実態はどのようなものなのでしょうか。退職した元刑事らの手記や関係者の証言を突き合わせると、エリートと呼ばれる所以と、その裏にある壮絶な経済犯罪 捜査実態が浮かび上がってきます。
二課に配属される刑事には、一般的な警察官に求められる武道や体力だけでなく、商法、会社法、金融商品取引法、地方自治法などの法律知識、さらには財務諸表を読み解く高度な簿記知識が必須とされます。被疑者として対面するのは、社会的な地位が高く、百戦錬磨の弁護団を従えたエリート官僚や大企業の役員たちです。論理の破綻や法律の解釈ミスがあれば、一瞬で捜査の主導権を奪われ、逆に国家賠償請求のリスクに晒されることになります。
事情聴取(取調べ)の現場でも、一課のような怒声や机を叩く手法は通用しません。元捜査員の告白によると、取調べは「静まり返った部屋での緻密な論理戦」そのものです。相手が事前に用意してきた完璧な虚偽ストーリーに対し、事前に押収した客観的証拠をどの順序で提示すれば矛盾を認めざるを得なくなるか、心理学的なチェスのように追い詰めていきます。「相手のプライドを保ちながら、保身の心理の隙間に事実を滑り込ませて自供へ導く」という、極限の精神戦が繰り広げられます。
また、捜査二課 刑事 階級の構成にも組織的な特徴があります。課長ポストには、国家公務員総合職試験をパスした警察庁のキャリア官僚(警視または警視正)が20代後半から30代半ばの若さで着任することが通例となっています。このポストは警察官僚の出世街道における「登竜門」と位置づけられており、現場叩き上げの熟練した警部や警部補たちが、若きキャリア課長を支えながら難事件に挑むという独特の緊張感を生み出しています。