明治屋の歴史は、1885年(明治18年)に磯野計氏が横浜で創業したことに端を発します。船舶納入業(シップチャンドラー)としてスタートし、いち早く海外の優れた食文化を日本へ紹介してきました。その明治屋が1933年、清水組(現・清水建設)の設計・施工により京橋の地に完成させたのが「明治屋京橋ビル」です。
当時としては画期的な鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)地下2階・地上8階建ての建築は、外壁に施されたスクラッチタイルや優美なアーチ窓、精緻なコーニス(軒蛇腹)など、ルネサンス様式を取り入れた近代建築の傑作として高い評価を受けました。特筆すべきは、民間ビルとして日本で初めて地下鉄(現・東京メトロ銀座線京橋駅)の駅出入口を建物内に組み込んだという歴史的背景です。
2000年代以降、京橋エリア一帯の大規模再開発計画が浮上した際、多くの歴史的建造物が取り壊されるなかで、明治屋ビルはその文化的価値が認められ保存される道が選ばれました。2016年にグランドオープンした「京橋エドグラン」の開発においては、超高層タワー棟を新設しつつ、既存の明治屋ビルをそのまま残して免震化(免震レトロフィット工法)を実施。歴史ある外観と内部空間を守りながら、最新の防災・環境性能を獲得したプロジェクトは、日本の都市再生における金字塔として建築界からも称賛を浴びています。