2006年7月、京都地方裁判所で行われた公判は、法廷全体が異様な静寂と涙に包まれる展開となりました。起訴内容は承諾殺人罪。通常、人の命を奪った罪は実刑判決が下されるケースが大半ですが、裁判長を務めた東尾和幸裁判官の下した判決は、懲役2年6ヶ月・執行猶予3年(求刑:懲役3年)という極めて異例の温情判決でした。
判決理由において裁判所は、「被告人が母の生命を奪った結果は誠に重大である」としつつも、献身的に母を介護してきた過去、生活保護を受けられず追い詰められた事情、そして母自身が息子を恨むどころか感謝し受け入れていた情状を詳細に認定しました。
判決言い渡しの後、東尾裁判官は被告人の息子に向かって静かに語りかけました。
「本件の悲劇的な結果は、被告人一人のみに背負わせるべきものではない。自ら命を絶つことなく、母の冥福を祈りながら、精一杯生きてその罪を償ってください」
この説諭を聞いた息子は法廷で深く頭を下げ、嗚咽を漏らしました。検察側もこの異例の判決に対して控訴を行わず、一審で判決は確定しました。