高級割烹や懐石料理だけが京都の食ではない。Netflixで世界配信され大きな話題を呼んだドラマ『舞妓さんちのまかないさん』は、花街の屋形を舞台に、日々の暮らしに寄り添う温かな手料理の数々を描き出し、国内外の視聴者に強烈なインパクトを与えた。華やかな舞台裏で食べられる素朴なプリン、出汁をたっぷり含んだ親子丼、あるいは祇園の喫茶店で愛される分厚い玉子サンド。そうした日常の「まかない飯」や「おばんざい」に、熱いまなざしが注がれている。
このカルチャーの浸透によって、観光客の足取りは高級店から路地裏の大衆食堂や純喫茶へと広がった。朝食に炊き立ての白米とお揚げの味噌汁を丁寧に味わうこと自体が、最高峰の京都体験として再評価されている。華美な演出を削ぎ落とした先にある、滋味深い日常の味わい。それこそが、何百年もこの街の胃袋を支えてきた真の名物なのかもしれない。