こうした京大寮を巡る葛藤は、フィクションの世界にも強烈なインスピレーションを与えてきた。劇作家・渡辺あやが脚本を手掛けたドラマおよび映画『ワンダーウォール 劇場版』は、まさに吉田寮をモデルに、理不尽な建て替え問題に直面した学生たちの苦悩と連帯を鮮烈に描き出した傑作だ。
現在もNHKオンデマンドなどで視聴可能な本作は、単なるノスタルジックな青春群像劇にとどまらない。対話を拒絶しマニュアル通りの管理を推し進める組織と、居場所を守ろうとする個人の対立を描いた優れた社会問題ルポルタージュとしての側面を持つ。作品が投げかけた「他者と対話するとはどういうことか」という問いは、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返す現代社会の急所を鋭く突いている。