公の場で影響力を持つ著名人が病気を公表することは、社会の理解を深める大きな原動力となってきました。過酷な病状と向き合いながら、自らの存在と発信を通じて人々に勇気を与え続ける表現者たちの歩みと現在地をまとめました。
津久井教生(声優)
NHK Eテレの長寿キャラクター「ニャンちゅう」の声を長年担当した津久井教生氏は、2019年10月にALSの発症を公表しました。声が出しにくくなる球麻痺型の症状から始まり、気管切開手術を経て声を失うこととなりましたが、自らの過去の声を学習させた音声合成技術やアバターロボット「OriHime」を活用して精力的に発信。現在もYouTubeやブログを通じて、病気のリアルな日常や前向きに生きるメッセージを伝え続けています。
武藤将胤(一般社団法人WITH ALS代表 / クリエイティブディレクター)
大手広告代理店勤務時の2014年、27歳でALSの宣告を受けた武藤将胤氏。視線入力装置を自在に操り、テクノロジーとエンターテインメントを融合させたフェス「MOVE FES.」の主催、アパレルブランドのプロデュースなど多岐にわたるプロジェクトを牽引しています。「NO LIMIT, YOUR LIFE」を掲げ、瞳の動きだけでDJプレイやスピーチを行う姿は、多くの人々に限界を超越する可能性を示しています。
スティーヴン・ホーキング博士(理論物理学者)
21歳の若さでALSの診断を受け、「余命数年」と宣告されながらも76歳で生涯を閉じるまで第一線で宇宙論の研究を続けた世界的碩学です。音声合成システムを搭載した特製車椅子を操り、『ホーキング、宇宙を語る』などの名著を執筆。車椅子の天才科学者として世界中の人々に知的な刺激を与え、ALS患者でも長期にわたり知性的な功績を残せることを証明しました。
佐野慈紀(元プロ野球投手・野球解説者)
近鉄バファローズなどで活躍した元投手の佐野慈紀氏は、重度の糖尿病による右腕切断という試練に続き、2026年にALSの確定診断を受けたことを公表しました。過酷な現実を受け止めつつ、明るい語り口と不屈の闘志でリハビリの様子や心境をSNSで公開。野球ファンをはじめとする多くの人々から温かいエールが寄せられています。
ルー・ゲーリッグ(元MLB選手)
ニューヨーク・ヤンキースの伝説的スラッガーであり、2130試合連続出場記録を打ち立てた「鉄人」。全盛期にALSを発症して引退を余儀なくされ、アメリカでは今なおALSが「ルー・ゲーリッグ病」と呼ばれる契機となりました。引退スピーチで語った「私は地球上で最も幸せな男です」という感謝の言葉は、スポーツ史に残る名演説として語り継がれています。